クドリャフカの順番
米澤穂信。
素晴らしい。
個人的には、ここのところ、学園ミステリがお気に入りに上がるケースが多い気がします。
で。
クドリャフカってのは、犬の名前。
ライカ犬。ソ連の実験で宇宙へ放り出された悲しいライカ犬。
おかげで、ガガーリンは無事帰ってこれたのですが。
そして。
【以下ネタバレ】
私はいわゆる「古典部」シリーズを読んでません。
いきなりこれから読み始めたわけですが。
摩耶花ー。
と、思わず叫びたくなるいいキャラです。
私にとっては、この子こそポイント。
いや、よくできた子なんですが。
だけど。
この子と「夕べには骸に」をめぐって展開される河内先輩とのエピソード。
当然、物語の主題に迫るエピソードだけど、これがまた超絶にイタい。
自分の、「まんが」にあまり興味を持っていなかった友人が。
ある時、自分など及びもつかない作品を仕上げたとき。
そして、それがたった一作だけの「遊び」だったときは?
その手から新しい物語は紡がれず、そして、血を吐くような思いで自らの手で生み出した物語がそれに及ばないとき。
自分が絶対に及ばない領域がこの世の中に存在していることを知って、なお。
私のように、すでに何かを割り切ってしまった年齢ならともかく。
それをふまえて、あえて取り組むことができるだけの経験を積んでしまった後ならともかく。
高校生という、「可能性」の塊みたいな世代がそれを知ったとき。
その想いは。
私自身、アマチュアとはいえ、いろいろと物語を創ろう、なんて考える方です。
で。
いわゆる「伝説の傑作同人誌」みたいなものの物語を書こうとしたことがあります。
書けなかったけど。
私には、才能の塊みたいな人間が、あっさりとその才能を見限るなんて、そんな描写はできそうにありません。
まあ、そういう甘さがアマチュアなところなのでしょう。
河内先輩と衝突して。
そして、河内先輩の内にあるものをかいま見て。
自分自身に限界を感じつつも、それに見切りをつけられない。
決して下手ではない。
だけど、それには及ばない。
そして、自分がもう一冊選ぶのなら、と手に取った「ボディートーク」
だけど、それはやはり、後一歩及ばないと断定して。
それでも、それが好きなのは変わらず。
だけど、その作者が先輩だと知ったとき。
そして、それらと。
自分の漫画を比べて。
とうに、割り切ってしまっていたはずの自分が少しブルーな気分になりました。
ああ、と。
そして、摩耶花の気持ち。
こういう物語を綴れる方は、やはり。
そして、自分がそれに、永遠に及ばないと知りつつ、私はやはり物語を手に取りつづけることでしょう。
やっぱ、そういうものです。
やっぱ、ね。
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